筋肉の成長を邪魔する「ミオスタチン」とは?
「ミオスタチン」または「マイオスタチン」は、筋線維から分泌されるタンパク質です。その働きですが、筋肉の成長を「邪魔する」というよりは、筋肉の成長を「強く抑制する」成
長因子の一つという表現が正しいでしょう。
では、なぜ成長を抑制する因子が必要なのでしょうか。筋肉の元になる細胞である「筋サテライト細胞」は筋肉の発達や復元にはなくてはならない細胞ですが、筋サテライト細胞がとめどなく分裂して増えすぎてしまうと、筋肉が異常に太くなりすぎたり、簡単にがんになってしまう危険性もあります。そこで、筋サテライト細胞の増殖を促す成長因子がある一方で、ミオスタチンのように細胞の増殖にブレーキをかける因子もあるわけです。
マウスを使った動物実験では、マウスの筋肉に強い刺を与えると、ミオスタチンの量が約三分の二に減るという結果が出ました。また人間でも、「加圧トレーニング」によって太くなった筋肉を調べてみると、やはりミオスタチンの発現が半分ぐらいに落ちるという結果になりました。これらの結果から、外部の刺激や激しいトレーニングに対する筋肉の適応に、ミオスタチンがひじょうに重要な働きをしていることがわかります。
ミオスタチンの観点から、筋力トレーニングによって筋肉が太くなるメカニズムを説明してみましょう。トレーニングによって筋肉に刺激を与えると、まずミオスタチンの発現が減っていきます。これにより、ミオスタチンが「オフ」にしていた筋サテライト細胞の増植スイッチが「オン」になり、増殖した細胞は筋線維に融合して、筋線維が太くなる。トレーニングの刺激によって、ミオスタチンの働きを阻害するタンパク質(ミオスタチン・アンタゴニスト)の発現が増えるらしいこともわかってきました。
※資料引用
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